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ADHDに対するグアンファシンとアトモキセチンの効果

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こんにちは、黒田です。


私の薬局で、アトモキセチンカプセルが不動在庫になってしまったので、懇意にしている薬局に引き取ってもらえない相談を持ち掛けました。その薬局では、過去にちょこちょこ同薬剤を使用していることを知っていたからです。ところが先方曰く、ここしばらくのうちにアトモキセチンからグアンファシンに全症例で切り替わってしまったため、そちらでも不動になっているとのこと。


そのため、分譲の件はお流れになってしまったのですが、ここで疑問が生じます。それほどこぞって薬剤変更をしなければならないほど、両者の効果・副作用には違いがあるのか、と。そこで、今回はグアンファシンとアトモキセチンの有効性・安全性の違いについて調べることにします。


 

参考にした文献


5年ほど前になりますが、ちょうどよさそうなRCTが報告されていたので、これを読んでいきます1)


Summary

 

  • 中等度以上のADHD患者に、グアンファシンまたはアトモキセチンを投与すると、プラセボと比較して、ベースラインからのADHD-RS-IVスコアに変化があるか検討した、二重盲検RCT
  • いずれの実薬でもプラセボ比較で有意な改善が見られたが、効果量はグアンファシンで大きかった
  • 副作用は薬剤ごとに頻度の高いものが異なり、グアンファシンでは傾眠が、アトモキセチンでは嘔気が多かった

 



Study desgin

  • P: Male and female children/adolescents (6?17 years old) with a diagnosis of ADHD of at least moderate severity (中等度以上の重症度である6-17歳のADHD患者)
  • E1: グアンファシン
  • E2: アトモキセチン
  • C: プラセボ
  • O: The primary efficacy measure was the change from baseline in the investigator-rated ADHD-RS-IV score at Visit 15 (主要評価項目は、15回目の訪問時における研究者評価のADHD-RS-IVスコアのベースラインからの変化)
  • T: 二重盲検RCT

 

  • ランダム化:具体的な方法は記載されていないようだが、割り付け人数やベースラインでの患者背景に大きな偏りは見られない
  • ITT解析:行われている



各薬剤の用量については、グアンファシンでは0.05-0.12mg/kg/dayを、アトモキセチンでは1.2-1.4mg/hg/dayをそれぞれ維持量として漸増していくデザイン。いずれも、日本における標準的な用量とおおむね一致している。
 

 

ちなみに、「15回目の訪問」とは、小児では10週目、青年では13週目。



Result

主要評価項目についての結果は、Table 2にまとめられている。いずれの薬剤でもプラセボ比較で有意改善。





副作用についてはTable 3に記載がある。大雑把にまとめれば、傾眠や倦怠感など中枢抑制にかかわるものはグアンファシンに多く、嘔気・嘔吐などはアトモキセチンに多い傾向にあるといえるか。






コメント

この文献では、親切にも両薬剤の効果量まで記載してくれています。具体的には、グアンファシンで0.76、アトモキセチンで0.32です。アトモキセチンでも悪くない数値だと思いますが、グアンファシンはそれ以上に大きく、かなり効果があると考えてよさそうです。両者の残差をとれば0.44ですから、この差は決して小さくないでしょう。こうしたことを考慮すれば、アトモキセチンからグアンファシンに切り替えるケースが多く出てくるのも、納得できることだと思います。


一方で、副作用のプロフィールには両薬剤でそれなりの差があります。いずれも薬剤群でも、副作用による試験からの脱落率は20%程度でほとんど差がないことから、重篤な副作用の頻度には際立った違いはないのでしょう。しかしながら、グアンファシンでは眠気の頻度がかなり高く、プラセボでの頻度と残差をとってNNHを計算すると4くらいになります。このあたりの理由で継続が困難になるケースも、そこそこ出てくると予想されます。もっとも、これはアトモキセチンにおける嘔気でも同じことがいえるので、患者によってどちらの副作用が認容しやすいかで使い分けができると解釈すればよいのではないでしょうか。


では、また次回に。




Reference

  1. Hervas A, et al. Efficacy and safety of extended-release guanfacine hydrochloride in children and adolescents with attention-deficit/hyperactivity disorder: a randomized, controlled, phase III trial. Eur Neuropsychopharmacol. 2014 Dec;24(12):1861-72. PMID: 25453486




 


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