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PCI施行例に対するニコランジルの効果

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こんにちは、黒田です。





以前に、コロナウイルス感染症流行の関係でニコランジルの供給が滞り、ちょっとした騒ぎになったことがありました (原料の枯渇かな?)。



このニコランジルですが、PCI施行後などの患者にひたすらdo処方されることが多い印象があります。というか、一度開始すると基本ずっと継続という感じではないでしょうか。実際に、こうした使い方にはどのくらいの臨床的意義があるのか疑問に思ったので、関係しそうなメタ解析を参照します1)




 

デザインについて

  • P: PCIを受けたCAD患者
  • E: ニコランジル
  • C: 無治療、プラセボ、一硝酸イソソルビドなど別の治療など
  • O: 全死亡、心血管死、心不全、心筋梗塞など
  • T: メタ解析

 

  • データソース:PubMed、EMBASE、OVID、CENTRAL、CBM、CNKIなど
  • 研究種別:RCT
  • 検索言語:制限なし
  • 調査人数:2名独立
  • 出版されていない文献:調査している



基本的なデザインに特に問題はないと思われる。


 

 

 

結果について


全死亡などについてのオッズ比 (対対象群。数値が小さいほどニコランジル有利。括弧内は95%CI) は、PPCIとEPCIの方法別に示されているが、ほとんど結果が同じなので、ここではトータル分だけを抜粋。
 

 

  • 全死亡:0.42 (0.29 to 0.61)
  • 心血管死:0.41 (0.25 to 0.67)
  • 心不全:0.39 (0.25 to 0.61)
  • 心筋梗塞:0.60 (0.34 to 1.08)



上記の中では例外的に、心不全のEPCI群で95%CIが広めで、0.55 (0.18 to 1.62) と有意差が付いていない。


次に、全死亡をフォローアップ期間別に集計した場合のオッズ比を同様に抜粋 (PPCI群のもの。なぜかこちらはPCI手技別のデータしか記載されていなかった)。
 

 

  • 1年以上:0.60 (0.28 to 1.32)
  • 30日以上1年未満:0.42 (0.10 to 1.88)
  • 30日未満:0.25 (0.08 to 0.73)



 

 

コメント


心筋梗塞については有意差が出ていなかったものの、各種評価項目をおおむね40-60%程度減らしていると読み取れ、思いのほか優秀な結果といってよさそうです。


しかしながら、組み入れられた試験のデザインをよく見ると、経口投与のほかに静注や冠動脈注入などの投与法が用いられています。そのため、冒頭で書いたようなずーっとdo処方で経口投与が続いているケースなどとは少し状況が異なるかもしれません。


また、フォローアップ期間別の解析結果を見ると、時間経過とともにニコランジルと対照群の差が縮まっていることが分かります。おそらく、評価項目になっているようなイベントは比較的早期に生じて、徐々にその影響が取れてくるためだと思います。この解析では対象文献数が減っているために95%CIはかなり広めに出ており、具体的にどのくらいの期間継続すると効果がなくなるのかまでは断定できかねますが、それでも1年も続ければかなり効果が薄れていると推定できます。


したがって、あまりにも長期間継続されているケースでは減薬も視野に入ると思います。とはいえ、薬価も非常に安く、目立つ副作用もそれほどない薬なので、特別な事情が生じない限りは継続したくなる気持ちも分かります。基本的には1日3回服用になるので、併用する機会の多い薬に比べて服用回数が多くなりがちです。例えば、ニコランジルだけ毎食後服用で、ほかの薬は朝食後のみ服用、かつ昼や夕の飲み忘れが多いケースなどで減らすとしたらニコランジル、という感じになるでしょうか。


では、また次回に。




Reference

 

  1. Xin Zhang, et al. Effects of Nicorandil on All-Cause Mortality and Cardiac Events in CAD Patients Receiving PCI. Int Heart J. 2019 Jul 27;60(4):886-898. PMID: 31308321




 


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