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薬剤性女性化乳房に関して

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こんにちは、黒田です。






またまた薬剤師国家試験絡みですが、第104回の試験で薬剤性の女性化乳房を意識したと思われる症例が出題されました。その際に、関連する生体物質を答えさせる問いがありました。何となくの雰囲気で正答は導ける感じだったのですが、他の選択肢が本当に女性化乳房に関係しないのか自信が持てなかったところもありました。


そこで、今回は薬剤性女性化乳房について調べてみます。文献を検索したのですが、あまりまとまったものが見つからなかったので、複数の文献から断片的に情報を拾っていく形になりました。

 

得られた情報1,2)

  • 女性化乳房のうち10-25%が薬剤性である
  • 病態生理学的メカニズムとしては、外因性のエストロゲン曝露・性腺機能低下を生じる薬物への曝露・抗アンドロゲン作用・高プロラクチン血症が推定されている
  • 血清エストロゲン/アンドロゲンの比のバランスが崩れていることが関係すると考えられている
  • 治療の基本は、推定される原因薬物を中止することである
  • 原因薬物の中止が不可能である場合は、テストステロン補充療法が考慮される。また、男性で性腺機能正常の場合は抗エトロゲン薬・タモキシフェン・アロマターゼ阻害剤が選択肢となる可能性がある


予想はしていましたが、やはり大きな影響を与えるのは性ホルモンのバランスとのことです。それにしても、女性化乳房の原因のうち2割近くが薬剤性とは、かなり多い印象です。そういう症例を見たら使用している薬剤の確認は必須でしょう。



 

原因となり得る薬物2-6)

いくつかの文献を斜め読みして、原因と推定されていた薬物を以下に挙げます。ざっくり調べただけなので、拾い切れていないものもあるかもしれません。

 

  • 性ホルモン
  • 抗アンドロゲン薬
  • スピロノラクトン
  • シメチジン
  • ベラパミル
  • 抗がん剤 (特に白金系)
  • ジアゼパム
  • 三環系抗うつ薬
  • 神経遮断薬
  • カルシウムチャネル拮抗薬
  • カプトプリル
  • ジギタリス配糖体
  • オメプラゾール
  • 抗菌薬の一部 (特にイソニアジド・エチオナミドなどの抗結核薬?)
  • 成長ホルモン
  • 抗HIV薬
  • エンテカビル


見た感じでは、明らかに共通する作用機序などは見出せないように思います。敢えていえば、化学構造的にステロイドかそれに類似するようなものを持っているものが多いことでしょうか。上に挙げた中でも特に有名と思われるスピロノラクトンは、このパターンだと思います。しかし、例えばカプトプリルなどは全然そんなことありませんし、一概に推定することは難しいようです。


断片的に情報を拾っただけなので、まとまった結論を導き出すことが難しいのですが、女性化乳房の原因として薬剤性の頻度はかなり高く、また原因となり得る薬物にもかなりの種類があることは分かりました。プライマリケア領域で使用することの多い薬も多いので、時々見返してチェックしたいと思います。


では、また次回に。



Reference

  1. Eckman A, et al. Drug-induced gynecomastia. Expert Opin Drug Saf. 2008 Nov;7(6):691-702. PMID: 18983216
  2. Hugues FC, et al. [Drug-induced gynecomastia]. Ann Med Interne (Paris). 2000 Feb;151(1):10-7. PMID: 10761558
  3. van Ramshorst MS, et al. Efavirenz-induced gynecomastia in a prepubertal girl with human immunodeficiency virus infection: a case report. BMC Pediatr. 2013 Aug 13;13:120. PMID: 23941256 
  4. Singano V, et al. The burden of gynecomastia among men on antiretroviral therapy in Zomba, Malawi. PLoS One. 2017 Nov 20;12(11):e0188379. PMID: 29155891
  5. Sharma PK, et al. Gynecomastia caused by ethionamide. Indian J Pharmacol. 2012 Sep-Oct;44(5):654-5. PMID: 23112434
  6. Bayramıçlı OU, et al. A case of gynecomastia due to entecavir. Turk J Gastroenterol. 2010 Sep;21(3):313-6. PMID: 20931440


 


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