こんにちは、黒田です。
別途運営している、薬剤師国家試験のブログで質問が出た内容に関連する論文を読んでみました。
メタボリックシンドローム小児の耐糖能に対するACE阻害剤の効果
Abstract- 小児メタボリックシンドローム患者で、ACE阻害剤を使用している者と、していないものを比較すると、身体測定値および血液検査所見に差が出るか検討した、レトロスペクティブ研究
- デザイン面に大きな問題なし
- 身体測定値には、群間で有意差がなかった
- 血糖値、HOMA-R、LDLなどの検査所見は、ACE阻害剤使用群で有意に改善した
P: A total of 53 children with MS, who had been followed for at least one year (1年以上のフォローアップができたメタボリックシンドローム小児)E: obese children (13 female, 10 male) who were using an ACE inhibitor (ACE阻害剤使用。N=23)
C: obese children (13 female, 17 male) who were not using an ACE inhibitor (ACE阻害剤未使用。N=30)
O: Anthropometric and laboratory data obtained at baseline and at the 3rd, 6th, and 12th months of follow-up (フォローアップ3月後、6月後、12月後の人体測定および検査値)
T: レトロスペクティブ研究
・交絡因子の調整:血糖値、血清インスリン値、HOMA-R、血清コレステロール、血清TG、年齢、体重、BMIでマッチングされている。
Result
体重、BMIなどの体格に関する測定値は、いずれのフォローアップ期間でも群間に有意差がなかった。
各検査値の12月後における平均値 (SD) は、それぞれ以下の通り。
血糖値 (mg/dL)
・ACE阻害剤なし:88.7 (5.3)
・ACE阻害剤あり:77.6 (11.3)
残差のp値=0.002でACE阻害剤あり群で有意に低下した。
インスリン (ulU/mL)
・ACE阻害剤なし:17.3 (7.5)
・ACE阻害剤あり:13.5 (7.4)
残差のp値=0.001でACE阻害剤あり群で有意に低下した。
HOMA-R
・ACE阻害剤なし:4.1 (2.0)
・ACE阻害剤あり:1.9 (1.3)
残差のp値=0.000でACE阻害剤あり群で有意に低下した。
LDL (mg/dL)
・ACE阻害剤なし:97.6 (14.4)
・ACE阻害剤あり:89.8 (16.2)
残差のp値=0.029でACE阻害剤あり群で有意に低下した。
HDL (mg/dL)
・ACE阻害剤なし:48.6 (12.6)
・ACE阻害剤あり:57.2 (6.4)
残差のp値=0.005でACE阻害剤あり群で有意に増加した。
TG (mg/dL)
・ACE阻剤なし:139.7 (31.8)
・ACE阻害剤あり:120.1 (17.5)
残差のp値=0.010でACE阻害剤あり群で有意に低下した。
Reference
Bitkin EC, et al. Effects of ACE inhibitors on insulin resistance and lipid profile in children with metabolic syndrome. J Clin Res Pediatr Endocrinol. 2013 Sep 10;5(3):164-9. PMID: 24072084
現在のところ、分子生物学的な機序は明らかでないようですが、ACE阻害剤にはインスリン抵抗性を改善する可能性がありそうです。
では、また次回に。