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帯状疱疹治療薬「アメナメビル」の効果

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こんにちは、黒田です。


ここ最近、抗ヘルペス薬の処方を立て続けに受け付けています。いろいろな医療機関から来る関係で使用する薬剤もまちまちなのですが、実際の治療効果にどのくらいの差があるかについてはずいぶん前に少し調べて以来、ノータッチとなっていました。


これと関連して、少し前に新規の薬剤「アメナリーフ」が発売されていたことを思い出しましたので、今回はこの薬剤に関する文献を見てみたいと思います。


 

基本情報の整理 (1)

最初に、アメナリーフ錠についての基本的な情報を整理したいと思います (2018.10現在)。

 

  • 有効成分:アメナメビル (Amenamevir)
  • 薬理作用:ヘルペスウイルスのヘリカーゼ・プライマーゼおよびこれら複合体のDNA依存性ATPase活性の阻害
  • 規格:200mg錠のみ
  • 適応症:帯状疱疹のみ
  • 用法用量:通常、1回400mgを1日1回経口投与
  • 代謝・排泄:肝代謝型薬物。代謝酵素分子種はCYP3A。CYP3AおよびCYP2B6誘導作用を有する
  • 併用禁忌:リファンピシン (ともにCY3A4を誘導するので、相互に代謝が促進されるため)
  • その他:使用期間は、原則的に7日間


他の抗ヘルペス薬との大きな相違点は用法でしょうか。対象の疾患によって異なりますが、たいてい1日2回か3回必要なのですが、アメナメビルは1回でよいので服用はかなり簡便になると思います。反面、現状では帯状疱疹にしか適応がないのが欠点でしょうか。まあこれはそのうち拡大になる可能性が高いと推測されますが・・・。


薬剤と直接の関係はありませんが、CYP2B6って基質になる薬物をあまり知らないような・・・と思って調べると、エファビレンツなどが該当するようです。といっても、これはプライマリケア領域ではあまり遭遇しない薬だと思いますが。


 

 

 

バラシクロビルとの比較試験

では、ここから臨床試験を見ていきます。ちょうど1年ほど前に日本人患者を対象にバラシクロビルとの比較を行ったRCTを見つけたので、これを取り上げることにします (2)。


Summary

  • 発症初期の帯状疱疹患者に、アメナメビルを投与すると、バラシクロビルと比較して、第4病日における新規病変発生休止割合が変化するか検討した、二重盲検RCT
  • 通常用量で比較した場合、アメナメビルとバラシクロビルは同程度の効果を示した
  • 副作用にも群間で大きな差はなかった





Study design

  • P: men or non‐pregnant women between 20 and 80 years of age, who were clinically diagnosed with localized herpes zoster presenting within 72 h after rash onset (皮疹発生後72時間以内に帯状疱疹と診断された20-80歳の男性および妊娠していない女性)
  • E: amenamevir 400 mg or 200 mg p.o. once daily (アメナメビル400mgまたは200mgを1日1回経口投与)
  • C: valaciclovir 1000 mg three times daily (バラシクロビル1回1000mgを1日3回)
  • O: The primary efficacy end‐point was the proportion of cessation of new lesion formation by day 4 (主要評価項目は第4病日における新規病変発生の休止割合)
  • T:  multicenter, randomized, double‐blind, three‐arm, parallel‐group, phase 3 study (多施設共同の第3層二重盲検RCT)


ランダム化について:割付は各群1:1:1。年齢・性別など基本的な患者背景のほか、皮疹の部位や発症後の経過時間なども大きな偏りなく割り付けられている

 

 

 


ITT解析について:主要評価項目における解析は、Full analysis setで行われたとの記載がある。具体的には、被検薬を1回以上投与され、かつ1回以上の評価項目測定を行われた被験者が対象。厳密な意味でのITT解析ではないが、除外されているのは各群250名程度のうち数名なので、結果に深刻な影響を与えることはないと思われる。


dose設定については、アメナメビルは400mgが通常量で、200mgは比較用の低用量という設定の様子。対するバラシクロビルは帯状疱疹に対する標準的な用量となっている。基本的には、400mg群とバラシクロビル群で差を見ていくことになりそう。


一応、非劣勢のデザインが採用されている様子。





Result


主要評価項目である第4病日における新規病変の発生休止割合は、以下の通り。95%信頼区間はバラシクロビル群との残差のそれ。いずれの群でも統計学的な有意差はなかった。




副次評価項目についても、いろいろ検討されているが、これまた統計学的な有意差はなし。




副作用に関する検討でも、群間に大きな差はない様子。というか、副作用自体があまり認められていない感じ。





コメント


もともとのデザインが非劣勢の検討なので、あまり突っ込んだ話はできないと思いますが、それを差し引いてもバラシクロビルと同程度の治療効果は期待できそうです。通常用量同士での比較で主要評価項目の差が6%ですから、NNTは17となります。臨床的にはまあまあインパクトが大きい方ではないでしょうか。


上でも述べている通り、投与が1日1回で済むのはそれなりのメリットになるでしょう。また、体内動態において腎機能の影響を受けづらいので、腎機能が微妙か不明な人なら、こちらを使ってみるのも手かもしれません。類似した薬理作用を有する薬物のうち、他のものと体内動態特性が異なるものは結構重宝しますので、臨床的には歓迎すべき薬剤といえると思います。


では、また次回に。



Reference

  1. アメナリーフ錠200mg 添付文書 マルホ株式会社
  2. Kawashima M, et al. Amenamevir, a novel helicase-primase inhibitor, for treatment of herpes zoster: A randomized, double-blind, valaciclovir-controlled phase 3 study. J Dermatol. 2017 Nov;44(11):1219-1227. PMID: 28681394



 


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