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血球貪食症候群に関して

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こんにちは、黒田です。





医薬品医療機器総合機構 (PMDA) から、医薬品安全対策情報 (DSU) が届きました。読んでみると、ラモトリギンの重大な副作用に「血球貪食症候群」が追加された旨の記載があります (1)。正直、聞きなれない症候群名なので、この機会に調べてみることにしました。


 

基本的な情報のまとめ

Referenceの2と3から、血球貪食症候群について基本的な情報を得ましたので、以下に箇条書きしておきます (2, 3)。

 

 

  • 発熱・汎血球減少・肝機能障害・高フェリチン血症・播種性血管内凝固症候群などの所見を示し、骨髄における血球貪食像を伴う成熟組織級増加を特徴とする
  • 先天性 (一次性)・反応性 (二次性) に大別されるが、前者はまれでほとんどは後者
  • 反応性のなかでは、感染に続発する感染関連血球貪食症候群と、悪性腫瘍に続発する悪性腫瘍関連血球貪食症候群が多い
  • 感染関連は原因病原体としてウイルスが多く、悪性腫瘍関連では悪性リンパ腫が原疾患として多い
  • 共通する病態として、高サイトカイン血症が推定されている、すなわち活性化したT細胞やマクロファージが産生するサイトカインによって、臨床症状が惹起されている
  • 先天性は、年間10名程度が新規に発症する
  • 治療法として、先天性には骨髄移植が、二次性には原疾患の治療に加えてステロイド・シクロスポリンなどの免疫抑制剤の使用が挙げられる



 

薬剤性の血球貪食症候群

こうした症候群が、ラモトリギンをはじめとした薬物によっても生じることがあるようです。PMDAの添付文書情報ページで検索すると、副作用として血球貪食症候群が挙げられている医薬品として、以下のものがヒットしました。
 

 

  • ラモトリギン
  • インフリキシマブ
  • エタネルセプト
  • アクチノマイシンD



ラモトリギンに関して調べると、ちょうど半年ほど前にこれについてまとめたものが公開されていました (4)。ここで「hemophagocytic lymphohistiocytosis」と書かれているのが、血球貪食症候群と同じ意味だと思われます。いくつか情報を抜き出すと、
 

  • ラモトリギンが1994年に使用され始めて以降、これに関連する血球貪食症候群が確定したもの5例、疑いがあるもの3件が報告されている
  • 報告されたラモトリギン誘起性の血球貪食症候群は、いずれも投与開始から24日以内に発生し、入院加療を要した
  • 8件のうち、1件で患者は死亡した
  • ラモトリギンの中止および血球貪食症候群に対する治療により、改善が生じた
  • 血球貪食症候群の初期症状は非特異的であるため、同じラモトリギンによるDRESSなどと混同される可能性がある
  • ラモトリギンによる治療開始後数週間は、血球貪食症候群の兆候・症状をモニターすべきである



権利関係でタイトルしか確認できませんが、2007年には文献5が出ています。ということは、10年くらい前にはすでに知られていた副作用なのでしょう。また、このタイトルに「high-dose lamotrigine」とあることから、血球貪食症候群の発現にも用量依存性があると推定されます。ということは、投与開始直後以外に、増量した際にもこの副作用に注意するべきなのでしょう。




Reference

  1. https://dsu-system.jp/dsu/web/viewer.html?file=/dsu/274/274.pdf
  2. 坪井 紀興 他 3.血球貪食症候群 日本内科学会雑誌 2001 90(8);1434-1440.
  3. http://www.nanbyou.or.jp/entry/722
  4. https://secure.medicalletter.org/w1549d
  5. Gümüş H, et al. Hemophagocytic syndrome associated with high-dose lamotrigine. Pediatr Int. 2007 Oct;49(5):672-3. PMID: 17875098


 


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