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イチョウ葉エキスの効果

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こんにちは、黒田です。


欧州などで古くから民間療法に用いられていた、イチョウ葉エキス。最近では、日本でもこれを含んだ食品を目にするようになりました。仕事をしていると、これの効果について質問されることがときどきあります。


率直にいって、目覚ましい効果があるとは考えにくいことから、積極的に勧めることはしてきませんでした。とはいえ、一度はきちんとデータを見ておく必要はあると思い至ったので、今回はこれについて調べることにします。いつも通り、関連しそうな文献を引っ張ってきて、それの中身を見てみます1)




 

文献の内容

Study design

 

  • P: コミュニティベースのコホート研究「Paquid」のデータ
  • E: イチョウ葉エキスまたは「ピラセタム」の使用
  • C: 上記のいずれも使用しない
  • O: MMSE、ベントン視覚記銘検査などのスコア
  • T: 遡及的解析



元になったコホート研究では、ベースライン以外に1、3、5、8、10、13、15、17、20年時点でデータ収集を行っている。上記「E」に記載した介入は、これらの調査時のうちいずれかで使用を報告した場合に条件を満たすデザインになっている。つまり、対象物質を摂取していた期間については不明である。この点は割引いて考える必要があると思われる。


被験者のベースライン特性については下表の通り。特段の補正はされていないようだが、明らかな偏りは見られない。MMSEについて統計学的有意差が見られるが、これは30点満点の試験だから、実質的に誤差の範疇と思われる。







Result

MMSE、Isaacs Set Test、ベントン視覚記銘検査のスコアの継時的変化については下のTable 2の通り。パット見た感じではどの群でもさほど差がないように感じるが、多変量解析の結果を示したTable 3を見ると、β値がイチョウ葉エキス (EGb761) だけ正の値であり、ほかの2群とは異なる傾向を持つことが読み取れる。










コメント

なかなか解釈が難しい結果だと思います。多変量解析の部分だけを見れば、イチョウ葉エキスには結構効果がありそうにも思えますが、各種スコア絶対値の継時変化を加味すると、ほとんど効果はなさそうにも感じます。


さらに上でも書いたように、イチョウ葉エキスやピラセタムの使用期間に関するデータがないこと、もともと別目的で行われていたコホート研究からのデータ二次利用の試験であることに由来する思い出しバイアスの存在が推定されることなどを考え合わせると、あまりはっきりした結論を導くのは難しいといえそうです。少なくとも、薬剤師として積極的に摂取を勧めるほどではないでしょう。結局、どのくらいの量をどれだけの期間摂取すればよいかも、この試験からはわかりませんので。


イチョウ葉エキスはワルファリンなどの医薬品と相互作用をすることが知られていますが、こうした事情がなにもなく、本人が使ってみたいというのならば、強く禁止するほどのこともないのかな、という印象です。暫定的には、これまで通りの対応をすればよさそうです。


では、また次回に。



Reference

  1. Amieva H, et al. Ginkgo biloba extract and long-term cognitive decline: a 20-year follow-up population-based study. PLoS One. 2013;8(1):e52755. doi: 10.1371/journal.pone.0052755. PMID: 23326356



 


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