こんにちは、黒田です。
こむらがえりに悩んでいる人は、結構多いものです。それゆえに、プライマリケア領域ではこれについて質問・相談されるケースはよくあります。たいてい、芍薬甘草湯を使って終わり、となるのですがほかの治療薬の選択肢となるとあまり思い当たるものがありません。また、発症の原因を質問されることもありますが、これについても「よくわからない」としか答えられないことが大半です。
そこで、一度こむらがえりについてきちんと調べてみることにしました。検索してみると、BMJ Clinical Evidenceに該当するレビューがあったので、これを参照します1)。
文献の内容
- こむらがえりは不随意、限局性かつ通常有痛性の骨格筋収縮である
- 一般的にはふくらはぎの筋肉に生じるが、足先から大腿まで脚のどこにでも生じ得る
- 通常、夜間に発生し数秒から数分持続する
- こむらがえりは一般的であり、発生率は加齢とともに増大する
- 一般診療所に通っている人の約半数は、過去1か月以内にこむらがえりの経験があり、50歳以上に限定するとその割合は3分の2まで増大するという報告もある
- こむらがえりの原因についてはほとんど知られていないが、危険因子として妊娠・運動・電解質不均衡・塩分欠乏・腎透析・末梢血管疾患・末梢神経障害・多発性神経障害・運動ニューロン疾患・特定の薬物 (β作動薬、カリウム保持性利尿薬など)、などが知られている
- 治療の目的は、けいれん発作の頻度・重症度を低減することである
- こむらがえりに対する鎮痛薬・抗てんかん薬・ベラパミル・ビタミンB6・塩化ナトリウムの有用性は詳細に検証されていない
- 少数被験者対象のRCTにおいて、ジルチアゼムがプラセボと比較してけいれん発作数を減少させたというデータがある
- こむらがえりに対するクエン酸マグネシウム・ビタミンEの効果は不明である
- キニーネはプラセボと比較して夜間のこむらがえり発作頻度を減少させる可能性があるが、不整脈・血小板減少・過敏症などの重篤な副作用に注意が必要である
- 妊娠中のこむらがえりに対するカルシウム塩・マグネシウム塩の効果について検証した試験には、有効であるという結果と無効であるという結果がいずれも存在する
基本的には、QOLが低下しないように発作頻度や痛みの度合いを軽減するアプローチをすればOKなようです。原因については、やはりよくわかっていないとのことなので、そういうものだと説明すればよいでしょう。これはBMJなので、さすがに芍薬甘草湯については触れられていませんでしたが、ある程度効果がありそうと結論づけられていた薬物は、キニーネだけでした。
そういえば、ずいぶん以前にキニーネの処方を調剤したことがありました。ごく普通のクリニックからだったので、まさかマラリアではないだろうとは思いましたが、使用目的がこむらがえりと聞いて驚いたのを覚えています。しかしながら、この文献の内容を踏まえれば、意外にも (?) 妥当な治療だったといえそうです。ちなみに、日本で販売されているキニーネは散剤しかなく、味が極めて苦いので、そのときは散剤を空カプセルに詰めて渡していました。「こんなものを使わなくても、普通に芍薬甘草湯でよくないか?」と思ったものですが、実際のところはどうなのでしょう。直接比較がされているとはちょっと思えないのですが、気が向いたときにでも調べてみたいと思います。
では、また次回に。
Reference
- Young G, Leg cramps. BMJ Clin Evid. 2015 May 13;2015. pii: 1113. PMID: 25970567