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術中虹彩緊張低下症候群へのα遮断薬の影響は薬物によって差があるのか

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こんにちは、黒田です。






高齢者を中心に白内障手術を受ける人は多いものですが、α遮断薬を使用していると術中虹彩緊張低下症候群のリスクが増大することはよく知られています。服薬指導のときに、手術を控えていることが話題に上ることがあり、その際にこうした薬物を使用している場合には、軽く注意をするようにしています (さすがに手術を実施する医療機関でチェックはされていると思いますが、念のため)。


しかしながら、α遮断薬といっても種類はいろいろあり、使用目的も異なります。薬物の種類によって特に影響が大きいものや、そうでもないものがあるのでしょうか?この点を疑問に思ったので、関連する文献を調べることにしました。ちょうどよさそうなメタ解析があったので、要点を以下にまとめます1)


 

文献の概要

権利の関係で抄録しか参照できなかったので、そこから読み取れることだけ書き上げます。
 

 

  • P: 超音波水晶体乳化吸引術による白内障手術を受ける患者
  • E: 術中虹彩緊張低下症候群の危険因子 (高血圧・糖尿病・α遮断薬など) 有り
  • C: 上記危険因子なし?
  • O: 術中虹彩緊張低下症候群の発症オッズ比
  • T: メタ解析

 

  • データソース:PubMed
  • 研究種別:?
  • 検索言語:制限なし
  • 調査人数:2名独立
  • 出版されていない文献:多分、調査している (「All references of relevant reviews and eligible articles were also screened.」とある)



総じて、妥当性には大きな問題がないと考えられる。


このメタ解析で評価の対象となったα遮断薬は、タムスロシン・テラゾシン・ドキサゾシン・Alfuzosin (他にもあるかも?)。このうち、テラゾシン・ドキサゾシン・Alfuzosinの効果量はほぼ同程度だったとのこと。際立って高かったのはタムスロシンで、次点のAlfuzosinと比較してオッズ比が40倍も高かったそうです。


ちなみに、評価されたうちほかのリスクファクターオッズ比 (95%CI) については、以下の通り。高血圧は有意な正の相関があった一方、糖尿病では統計学的に有意な関連はなかったよう。
 

  • 高血圧:2.2 (1.2-4.2)
  • 糖尿病:1.3 (0.7-2.2)



ということで、α遮断薬のなかでもタムスロシンには特に注意が必要であることが分かりました。抄録中に出てこないα遮断薬で、臨床現場にて使用されているものはまだまだありますが、さしあたりすべてのα遮断薬が横並びのリスクであるわけではないことまではいえそうです。


では、また次回に。



Reference

  1. Chatziralli IP, et al. Risk factors for intraoperative floppy iris syndrome: a meta-analysis. Ophthalmology. 2011 Apr;118(4):730-5. PMID: 21168223



 


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