こんにちは、黒田です。
先日、久々に「ビタミンCを摂ると風邪をひきにくくなるのか?」という質問を受けました。プライマリケア領域で尋ねられる素朴な疑問のなかでも上位にランクインするものと思われますが、そういえば具体的にどのくらいの影響があるのか、きちんと調べたことがありません。
気になって軽く調べたところ、コクランにシステマティックレビューがありましたので、それについて下にまとめることにします1)。
レビューの内容
- P: 一般地域住民または激しい運動を行う人
- E: ビタミンCを日常的に補充
- C: プラセボ
- O: 感冒の罹患率、罹病期間、または重症度
- T: メタ解析
- データソース:CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、LILACS、Web of Science
- 研究種別:ビタミンCの摂取量が0.2g/day未満のものとプラセボ比較でないもの以外
- 検索言語:英語?
- 調査人数:2名独立
- 出版されていない文献:調査している
Result
ビタミンC摂取者における感冒発症のリスク比 (95%CI) は、それぞれ次の通り。
- 一般地域住民:0.97 (0.94 to 1.00)
- マラソン選手・スキーヤー・亜寒帯で軍事訓練を受ける兵士:0.48 (0.35 to 0.64)
ビタミンC摂取による感冒罹病期間に対する影響については、それぞれ以下の通り。
- 成人:8% (3%~12%) 短縮
- 小児:14% (7%~21%) 短縮
コメント
感冒予防という観点では、普通に生活している人がビタミンCを日常的に摂取しても、ほとんど効果がないようです。一方で、激しい運動をする人に関してはリスク比をおよそ半減するのですから、こちらはかなりの効果があるといえます。対象となったのがマラソン選手や過酷な訓練に従事する軍人であり、普通の人とはかなり活動パターンが乖離した集団ですからやや保守的に解釈する必要はあるものの、一般に体を使う人のほうが予防効果は大きいということは覚えておいて損はなさそうです。
感冒の罹病期間に対する影響は成人と小児でやや幅があるものの、おしなべて10%程度短縮すると見てよさそうです。仮にもともとの罹病期間が5日とするならば、ビタミンC摂取によって半日これが短縮するということです。これを大きいと見るか小さいと見るかは個人差があるでしょうが、「ないよりはマシ」くらいの評価に落ち着くのではないでしょうか。ちなみに、症状持続期間を半日短縮という効果は、抗インフルエンザ薬とほぼ同じです。今回のレビューはインフルエンザは対象にされていないと思われるので何ともいえないところですが、もしインフルエンザにも同様の効果があるなら、抗インフルエンザ薬を使うよりはビタミンC飲料でも飲んだほうがよい、となる可能性もあるかもしれません。
どのくらい摂取すればいいのか?
今回も権利の関係で全文を参照できていないので、個々の試験でどのくらいのビタミンC摂取量があったのかは不明です。しかしながら、レビューの除外基準が摂取量0.2g/day未満であること、抄録中に「小児では1-2g/dayのビタミンC摂取で感冒の罹病期間が18%短縮した」という記載があることから、ここでは平均で1g/dayであったと仮定します。これは、どのくらいの量なのでしょうか。
日本食品標準成分表の、野菜類と果実類から、可食部100gあたりのビタミンC含有量の多い食品を目についた順にピックアップすると、以下のようになります2)。
- 生とうがらし:120mg
- なずな:110㎎
- 赤ピーマン (油いため):180㎎
- 生ブロッコリー:120mg
- アセロラ (酸味種・生):1700mg
- ゆず (果皮・生):160mg
- レモン (全果・生):100mg
- グァバ:220mg
これらから1日あたり1g (=1000mg) のビタミンCを摂取するのは、かなり厳しいと思われます。したがって、冬場に柑橘類を食べて風邪予防・・・という行為には、残念ながらほとんど意味がないということになります。真面目にビタミンCの効果を得ようと思ったら、医薬品やサプリメントなどの形で摂取しないと難しいでしょう。
またこれは一部では周知の事実ですが、上記の通りレモンに含まれるビタミンC量は、それほど多くありません。よく「レモン○○個分のビタミンC」といった表現を目にしますが、これは数字のトリックのようなもので基準に小さなものを持ってくることで、多く感じさせているだけというわけです。
いずれにしても、一般の人が風邪予防目的にビタミンCを摂取することは、あまり推奨できないことは確かそうです。よく体を動かす人なら多少は・・・というところですが、過度な期待はできないことは理解しておきます。
では、また次回に。
Reference
- Hemilä H, et al. Vitamin C for preventing and treating the common cold. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jan 31;(1):CD000980. PMID: 23440782
- 文部科学省 日本食品標準成分表2015年版