こんにちは、黒田です。
調剤やOTCの販売において、NSAIDsを触る機会は多いものです。NSAIDsといえば、アスピリン喘息が副作用として有名ですが、そういえばどのくらいの頻度があるのか知らないなーと、ある時ふと思いました。
ちょうどいい機会なので、アスピリン喘息について少し勉強しようと思います。
文献から得た情報
調べてみると、日本語の総説によさそうなものがあったので、ここから重要な部分を抜粋して以下に記載します1)。
- COX-1阻害をトリガーとして発症するため、アスピリンに限らずすべてのNSAIDsで起こりうる
- 成人喘息の10%程度を占めると推定され、喘息が重症であるほど有病率が増大する
- 鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎を合併することが多い
- 喘息・アスピリン過敏・鼻ポリープはアスピリン喘息の3主徴と呼ばれる
- 男女比は4:6とやや女性に多い
- 多くは成人発症で、小児ではまれである
- 多くはアトピー素因を持たない
- コハク酸エステル型のステロイド薬により喘息が誘発されることがある
- リン酸エステル型のステロイド薬は問題ない
- 確定診断されていないアスピリン喘息は重症で、ステロイド依存性であることが多い
- 適切な管理・治療を行えば、アスピリン喘息は軽症化する
- 病歴上、NSAIDsによる発作誘発がある場合でも、そのうち30%程度はアスピリン喘息ではないと考えられている (自然増悪や、同時服用した薬物に対する過敏症の誤診)
- イチゴ、柑橘類などはサリチル酸の含量が多く、アスピリン喘息患者に発作を生じさせる可能性がある
- 治療法は、一般喘息に準ずる
文献2によれば、20-44歳において直近12か月の喘鳴があった人が9.4%、医師により確認された現在の喘息が5.4%あったとのこと2)。これと、上記の「アスピリン喘息は成人喘息の10%を占める」を考え合わせると、普通の成人においては0.5-1%程度にアスピリン喘息があると計算できます。だいたい、100人から200人に一人。うちのような小さい薬局では事情が異なりますが、規模の大きい薬局などでは1日100名単位の来局があることも珍しくありませんから、期待値でいえば毎日1名程度のアスピリン喘息有病者と接していると推定されます。
これは結構な頻度といえますから、OTCの販売などの際にルーチンで確認してもいいくらいだと思います。しかしながら、誤診率もそれなりにあるようなので疑いがあるケースすべてにおいてNSAIDsを含んだ医薬品の調剤・販売をしない、というのは現実的にかなり難しいとも思います。医薬品の服用によって喘息発作が生じる可能性があること、その際は受診するなどの対処をすることを伝えるのがせいぜい、という場合も多いでしょう。
加えて、うちのように耳鼻科の処方を受ける機会の多い薬局では、副鼻腔炎や鼻ポリープを有する人も多くなり、結果として一般人口よりアスピリン喘息有病率の高い集団に接する機会が多くなることが予想されますから、アスピリン喘息により注意が必要になるでしょう。特に、初回来局時の聞き取りには気を付けるようにします。
では、また次回に。
Reference
- 榊原 博樹 2. アスピリン喘息 日本内科学会雑誌 98(12):2009 3089-3095.
- https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07.pdf